DX推進を加速させる起爆剤としてITシステム改善のニーズが高まっており、システム運用管理者には安定したサービスの供給や利用動向のログ解析などが求められています。一方で、解析すべきログや拾うべきアラートは増加するばかりで、ITシステムの改善にまで手が届いていないのが現状です。
システム運用管理は専門的な知識や技術が必要になるほか、慢性的な人材不足による属人化が課題となっています。その解決策として注目されているのが、AIを活用したシステム運用支援です。AIの活用により運用管理の属人化が解消されつつあり、迅速なトラブル対応や運用管理者の負担軽減などが可能になってきています。
AIを業務に導入する最大のメリットは、システム運用の課題となっている労働力不足を解消できることです。これまで人が行っていた単純作業や定型作業などをAIで自動化することで、現場の負担軽減が可能に。単純作業や定型作業はAIに、より専門性が求められる業務は人間に、と適切な業務分担ができ、少ない人員でもスムーズに業務を進めやすくなります。
単調な同じ作業を長時間繰り返し続けていると集中力や意識の低下から、ヒューマンエラーを起こしやすくなります。AIは単純作業を得意としており、さらに一定の品質を維持したまま24時間連続で稼働させることも可能。人間と違って疲れることがないので休憩を挟む必要もなく、業務の生産性向上に大きく貢献できるのが強みです。
これまでは人手不足を解消するとなると新たな人材を雇用する必要があり、人件費だけでなく、採用や育成のためのコストも発生していました。AIの活用によって人的リソースに頼っていた業務を自動化することにより、新たな人材の雇用が不要に。それにより人件費や採用・育成にかかるコストを削減できると同時に、人手不足の解消も可能にしています。
これまで人が行っていた業務をAIに置き換えることで、安全性の向上が期待されています。人による確認だと不注意や経験不足などで機械の不具合を見落としてしまうこともありますが、AIなら異常検知によって些細な変化にも気づくことが可能。それにより、事故が起きる前に対処することができます。
また、危険な作業をAIで代替することで、労災事故の防止に取り組めるメリットもあります。
AIの活用によりビッグデータの分析を行え、需要予測や問い合わせの返答なども自動化できます。顧客が求める商品や情報の提供が可能な体制を整えることで、顧客満足度の向上に取り組めます。
需要予測の取り組み例としては、顧客の消費行動に応じておすすめ商品を表示する「レコメンド機能」があげられるでしょう。また、需要に合わせた適切な在庫管理を実現することで顧客満足度を高められ、需要はあるのに商品がないという機会の損失を回避できるメリットもあります。
AIは自動言語処理を得意としているため、顧客との円滑なコミュニケーションにも活用できます。たとえばAIチャットボット機能を搭載した場合、顧客からの問い合わせに対して営業時間外でも自動返信・自動応答が可能に。問い合わせに迅速に対応できる体制を整えることで、顧客満足度を高められるほか、他社への流入を防ぐ効果を期待できます。
また、AIによる自動翻訳のサービスを利用すれば、外国人と円滑にコミュニケーションをとるうえでの助けにもなるでしょう。
大量のデータを人力で分析するとなると、膨大な時間がかかります。AIなら短時間で大量のデータを分析できるため、分析にかかっていたはずの時間を課題解決の施策の検討やテストなどにまわすことが可能。限られた人的リソースや時間を有効活用でき、自社のサービス品質や競争力の向上を目指せます。
また、AIによるデータ分析の精度をより高めたい場合は、国や地方公共団体などが公開しているオープンデータの活用をおすすめします。
RPAとAIは、「これまで人間にしかできなかったことをコンピューターが自動で行える」という点で共通していますが、根本的に異なります。
AIはデータの学習結果をもとに、はじめて接することを自動で分析、判断し予測するのに対し、RPAは「あらかじめ決められた(設定された)作業内容を繰り返す」機能を持つツールです。現在のRPAの多くはAIと連携しておらず、繰り返し作業を実行するだけのものです。
ただ、RPAによる業務自動化は高度化が進んでおり、AIの機能を少しずつ取り込みながら進化しています。近い将来、RPAが判断や予測を行いながら非定型業務も自動で行えるツールへ進化していくでしょう。
AIは人件費を削減できる一方で、継続的な機械学習や定期的なバックアップ、システムの障害対応などが必要となり、維持コストが発生します。また、社内にシステムの管理・保守に関する専門知識を持った人材がいない場合は、新たに人材を雇用するか外注の検討が必要になるでしょう。
予算が足りなくてAIの運用ができなくなるという事態にならないように、維持コストをあらかじめ確保しておくことが重要です。
AIはビッグデータを活用した分析ができる一方で、第三者によるハッキングや内部での情報漏洩が生じるリスクがあります。顧客情報や企業秘密などの重要な機密情報が漏洩した場合、損害賠償や企業の社会的イメージの低下などにつながりかねません。
そのため、AI技術の導入にあたっては、セキュリティ対策を講じる必要があります。また、万が一の情報漏洩のリスクに備え、セキュリティインシデント発生時のマニュアルを用意しておくと良いでしょう。
AI技術を導入するにあたり、AIを効果的に運用できているのかを評価するKPIの管理も必要になります。KPIとは「重要業績評価指標」を意味し、プロセスごとの目標達成度合いを計測・監視するために設定するものです。KPI管理により目標達成度合いを監視することで、問題点の把握や改善策の検討ができ、AIの効果的な運用を叶えられます。
AIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)とは、アメリカに本社を置くITアドバイザリ企業のガートナー社が提唱した概念で、「IT運用のための人工知能」を意味しています。
ガートナー社のAIOpsプラットフォームマーケットガイドによれば、AIOpsはビッグデータと人工知能または学習機能を組み合わせることで、IT運用におけるさまざまなプロセスやタスクの改善、部分的な刷新に貢献するソフトウェアシステムとのこと。AIOpsの活用により、可用性やパフォーマンスの監視、イベントの相関付け・分析、ITサービスの管理・自動化が可能に。
高難度化しているITシステムの運用をAIOpsで支援することで、システム運用を取り巻く環境の改善や現場の働き方改革が期待されています。
AIOpsの代表的なユースケースには以下の例があげられます。
たとえば運用管理工程における予兆検知は、過去のシステムパフォーマンスのデータをもとに障害につながる動作状況を検知し、将来的な障害リスクの低減および障害発生の抑止が目的です。障害が発生してからの対応だと復旧するまでシステムを停止させる必要があり、ユーザーにも影響が及びます。
機械学習により通常と異常の識別ができれば障害発生前に対処でき、システム停止の回避やサービスの安定稼働を実現。また、従来の人による個別監視では難しかった広範囲のシステム監視を自動で行え、障害の迅速な発見に貢献できるメリットもあります。
社会的にITシステムへの依存度が高まっており、ITサービス開発の競争も活発化しています。スピードと品質の両立を求める流れはシステム運用にも波及している一方で、いまだに人手作業に頼っている部分が多いのが現状です。属人化の解決策として注目されているのがAIと人の共存で、AIにより運用業務の効率化や省力化、インサイトの活用などを実現することで、運用管理のDXを目指せるでしょう。
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